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映像制作におけるコミュニケーション - 「クォリティ」という言葉に隠されたクライアントの真意

映像制作の現場において、クライアントとのコミュニケーションは、単なる情報伝達以上の意味と目的を持ちます。それは、クライアントのビジョンを共有しながら、同じ目標に向けて作品を創造するプロセスそのものです。


しかし、このプロセスが常にスムーズに進むとは限りません。

特に、クライアントの口から「クオリティ」という曖昧な言葉が飛び出した時、制作側は深い困惑に陥ります。クオリティという言葉が示す範囲は、映像の技術的な側面、例えば解像度や色彩、音声の明瞭さから、作品の構成や演出、さらには制作に関わるスタッフの態度や対応に至るまで、多岐にわたるからです。


制作工程も終盤に差し掛かった頃、クライアントがこの言葉を使う時、多くの場合それは具体的な技術的問題点を指摘しているのではなく、作品全体から受ける印象、つまり「何か違う」という感覚を表現していることが多いのです。

この「何か違う」という感覚は、クライアントが抱いていた作品のイメージと、実際に制作された作品との間に生じたズレから生まれます。このズレは、初期段階でのコミュニケーション不足、あるいはクライアントの意図を十分に理解しないまま制作を進めてしまった場合に顕著に現れるのもです。


映像制作者として、ここから更にズレを拡大させるわけにはいきません。ここからのクライアントとのコミュニケーションにおいては、以下の点に注意する必要があります。



  1. 具体的な言葉での確認


ひとまずは「映像のどの部分が、どのように期待と異なりましたか?」といった具体的な質問を投げかけ、クライアントの感覚を言語化してもらう。ただし、多くの場合、具体的で明確な回答は得られません。



  1. イメージの共有


クライアントが思い描く映像のイメージを、できるだけ具体的な言葉や参考映像を用いて共有し、認識のズレを入念に確認します。ズレていた場合は、ある程度の手戻りを覚悟して、リメイクします。



  1. 感情的な理解


クライアントが「クオリティが低い」と言う時、それは単なる技術的な指摘ではなく、感情的な不満である可能性を考慮します。作品に対する不安や不信感を、何よりも担当者であるあなたに対する不信感を取り除くために、誠実な態度で向き合い、共感を示します。



  1. プロとしての自覚


クライアントは、私たちに技術力だけでなく、彼らのビジョンを理解し形にする「感性」を期待しています。この期待に応えるためには、映像制作者は常にクライアントの立場に立ち、自らがもつ職業知識と経験を総動員して、彼らの意図を深く理解しようとする姿勢が不可欠です。


「クォリティが低い」と言われた時、それは単に作品の出来栄えが否定されたのではなく、クライアントとの信頼関係が揺らいでいるサインです。クォリティが低いという言葉は、期待度の大きさを表しているとも言えます。このサインを見逃さず、真摯に向き合うことで、信頼関係を再構築し、より良い結果が得られるよう粘り強く取り組むしかありません。


クォリティという言葉が出たら要注意
クォリティという言葉が出たら要注意

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