映像制作のセンスと美の基準要素
- Tomizo Jinno
- 1月4日
- 読了時間: 5分
更新日:3月23日
美を産み出す天性
映像作品には音楽や声も含まれていますが、評価の核心はやはり映像にあります。シンプルに言えば、すべてがバランスよく配置されていて、それが美しいと感じる映像を創る能力があることが、映像制作のセンスがあると言えるでしょう。カメラマンであればシナリオ中にあってその役割を果たせ、かつ美しい映像ショットを撮影できる能力です。ディレクターであればシナリオ意図をしなやかに描き出しながら、美しい映像の流れを作り出す能力だと思います。
私の身近にいるプロフェッショナルなデザイナーやカメラマン、ディレクターを見ていて、つくづく思います。身も蓋もありませんが、デザインや映像のセンスの大半は天性に支配されているに違いないと。
遷り変わる美しさと、変わらないデザインの基準要素
世にいう「美しさ」は、多くの人が美しいと感じた経験を創作として再生産し、拡散されることで、その時代における美の基準が定まっていきます。ですから、いわばその時代の多数決です。しかし、美の基準には民主主義が息づいていて、少数の異端な感性や、破壊的な創造者がしばしば時代を動かします。
人間の知性はその美しさの感覚をちゃんと言語化していて、優れたデザイン=多くの人が美しいと感じるデザインが、どのような要素を持っているか説明しています。それらの基準要素は、全てを満遍なく満たしているから美しいのではなく、それぞれの配合バランスによって、さまざまな個性が生まれます。個性=オリジナリティも美の基準として大変重要だからです。しかし、優れたデザイナーはこれらの基準をいつも念頭に置いてあれこれ考えているわけではありません。結果として出来上がっている作品を分析すると、以下のように説明できます。
(写真下へつづく)

美の基準要素①
ゲシュタルト原則
Gestalt principles
人間が視覚情報を認識する際に、無意識のうちに全体を把握しようとする心理的な法則のことです。つまり、個々の要素よりも、それらが組み合わさってできる全体像を重視して認識するということです。
近接の法則
Law of proximity
近い場所に配置された要素は、一つのグループとして認識されやすい。
類似の法則
Law of similarity
形状、色、大きさなどが似ている要素は、一つのグループとして認識されやすい。
閉合の法則
Law of closure
線や形が途切れていても、全体として閉じた形として認識しようとする。
共通の運命の法則
Law of common fate
同じ方向に動いたり、同じ変化をする要素は、一つのグループとして認識されやすい。
図と地の関係
Figure-ground relationship
ある要素が図として認識されると、その周りの部分が地として認識される。
良い連続の法則
Law of good continuation
線や形が滑らかに続いていると、途切れている部分があっても、一つの線や形として認識しようとする。
美の基準要素②
デザインの原則
Principles of Design
ゲシュタルト原則は、人間が視覚情報をどのように認識するかという心理的な法則を説明しており、デザインの原則は、これらの法則に基づいて、より効果的なデザインを作成するための具体的な手法です。
対称性
Symmetry
左右対称や放射状の対称など、バランスのとれた配置は安定感を与えます。
バランス
Balance
重量感や視覚的な重みを調整することで、安定感のあるデザインを実現します。
強調
Emphasis
特定の要素を大きくしたり、色を変えたりすることで、注目を集めることができます。
反復
Repetition
同じ要素を繰り返し使用することで、リズムを生み出し、統一感を高めます。
コントラスト
Contrast
異なる要素を対比させることで、視覚的な興味を引き出すことができます。
階層
Hierarchy
情報の重要度に応じて、異なる視覚的な要素を用いて階層構造を表現します。
白色空間
White Space
余白を効果的に活用することで、デザイン要素が際立ち、視覚的な呼吸を生み出します。
黄金比
Golden Ratio
美しさを感じやすい比率で、デザインのバランスをとることができます。
センスが良いとはどういうことか
デザインの基準要素を勉強したからと言って、誰もが優れたデザインを創作できるということではありません。映像を含め、デザインの創作センスがある人は、デザインの基準要素を言語のように体得していて、無意識のうちに言葉を喋るようにデザインし、創作しているのだと思います。
よく、上手い写真の撮り方としして「三分割法」とか「黄金比」という用語で説明されています。こうしたマニュアルを読んで「ほう!そうなのか!」と思ったなら、その時点で自分はセンスがないと思った方がよいかもしれません。センスのある人なら、誰に教えられなくても感覚的に知っていることだからです。
言語化がセンスの第一歩
(私を含め)自身がセンスがないと思う人がセンスを磨くのであれば、まずは自分が美しいと感じる感覚を、自身で言語化してみると良いかもしれません。自分がどのような時に美しいと感じるかがわかれば、どうすれば美しい写真を撮ることができるのか、わかってくるに違いありません。
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