動画・映像制作用語
【トラッキング】
tracking
現代の映像技術における「トラッキング」は、被写体や映像内の特定の対象物や動きを追跡する技術です。
過去のアナログテレビ放送のインターレース方式のブラウン管受像機においては、「トラッキング」という言葉は、水平同期と垂直同期の安定性を指す技術的な意味合いで使われていました。
インターレース方式とトラッキング
インターレース方式
ブラウン管テレビでは、画面を構成する走査線を1本おきに2回に分けて表示するインターレース方式が採用されていました。これにより、限られた帯域幅でより滑らかな動画表示を実現していました。
トラッキングの重要性
インターレース方式では、電子ビームが正確に走査線を追跡(トラッキング)することが重要でした。
ブラウン管内の電子銃から発射される電子ビームが、テレビ放送局から送られてくる信号に同期してブラウン管の内側に塗布された蛍光体を正確に走査する事をトラッキングと呼び、水平同期と垂直同期が不安定になる=トラッキングが不安定になると、画面のちらつきや、画面が斜めに傾くなどの現象が発生していました。
水平同期と垂直同期
水平同期は、電子ビームが水平方向に正確に走査線を追跡するための信号です。
垂直同期は、電子ビームが垂直方向に画面全体を走査するための信号です。
これらの同期信号の安定性が、トラッキングの精度を左右していました。
現代に使われる「トラッキング」
1. モーショントラッキング
映像内の特定の位置や動きを追跡する技術です。
映画やCMなどのVFX(視覚効果)制作で、実写映像にCGを合成する際などに用いられます。
顔認識技術と組み合わせて、顔の動きに合わせてCGキャラクターの表情を変化させるといった用途もあります。
2. オブジェクトトラッキング
映像内の特定の物体を追跡する技術です。
スポーツ中継でボールの動きを追跡したり、防犯カメラで不審者の動きを追跡したりする際に用いられます。
自動運転技術では、道路上の車両や歩行者を追跡するために利用されます。
3. カメラトラッキング
カメラの動きを追跡する技術です。
映画やドラマの撮影で、カメラの動きに合わせてCG背景を合成する際に用いられます。
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)コンテンツでは、ユーザーの視点に合わせて映像を変化させるために利用されます。
4. ヘッドトラッキング
VRゴーグルなどのデバイスで、ユーザーの頭の動きを追跡する技術です。
VR空間内で、ユーザーが頭を動かすと視界も連動して変化し、より没入感の高い体験を実現します。
5. アイトラッキング
視線の動きを追跡する技術です。
ユーザーが画面上のどこを見ているかを把握し、Webサイトのユーザビリティ評価などに利用されます。
VRコンテンツでは、視線を使ったインタラクションを可能にします。
6. ハンドトラッキング
手の動きを追跡する技術です。
VR空間内で、手を使ったジェスチャーで操作したり、物を掴んだりといったインタラクションを可能にします。
ゲームや産業用ロボットの制御などに利用されます。
トラッキング技術の活用例
映画・CMなどのVFX制作
スポーツ中継の映像効果
防犯・監視システム
自動運転技術
VR/ARコンテンツ
Webサイトのユーザビリティ評価
ゲーム
産業用ロボットの制御
【関連用語】
1. モーショントラッキングソフトウェア
映像編集やVFX制作で広く使用されるソフトウェアです。
強力なモーショントラッキング機能やカメラトラッキング機能を搭載しており、映像内の動きを正確に追跡できます。
mocha Pro
平面トラッキングに特化したソフトウェアです。
複雑な形状のオブジェクトや、映像内で隠れてしまうオブジェクトの追跡に優れています。
2. 3Dトラッキングソフトウェア
PFTrack
3Dカメラトラッキングに特化したソフトウェアです。
実写映像からカメラの動きや3D空間を再現し、CGオブジェクトを正確に合成できます。
3. アイトラッキングデバイス
Tobiiアイトラッカー
視線の動きを追跡するデバイスです。
Webサイトのユーザビリティ評価や、VR/ARコンテンツのインタラクションに利用されます。
4. ハンドトラッキングデバイス
Leap Motion
手の動きを3Dで追跡するデバイスです。
VR/ARコンテンツやゲームのインタラクションに利用されます。
5. 追跡システム
光学式モーションキャプチャシステム
複数のカメラで対象物の動きを3Dで追跡するシステムです。
映画やゲームのキャラクターアニメーション、スポーツ科学の研究などに利用されます。